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2011年4月

共に働くための課題(1) rev1

なにか提案されたり意見を言われたとき、提案や意見を提出した人(発信者)がだれかによって受け取り方が異なる。発信者が男性である場合は聞く耳をもつけれども、女性である場合、それも若い女性であると受け付けようともしない。こうした行動に出会うことはありませんか。

ここでは、発信者側に発信する権限がどれだけあるかといったローカルな制度上の関係を問題にしているわけではありません。<発信者側の性別に基づく受信者側のダブルスタンダード>を問題にしています。こうした行動傾向をもつ方は男性にも、女性にもみられるように思います。また、自らの行動傾向に気づいていないと思われる場合もあるようです。

このような行動傾向の上司がいる職場では、せっかくの発信を活かすことができず、発展が阻害されるように思います。地域でも同じような問題を見聞きします。公平な対応を築くにはどうすれば良いのでしょうか。

実際の場面では、いろいろな要因が絡み合っていることが多いですが、下記の有無は見立てておく必要がありそうです。

受信者側
①権威主義的なパーソナリティ
②傾聴能力や他者の感情の受け止めの未熟さ(対人スキルの問題)
③自己理解の未熟さや自信のなさ
④性別に基づくダブルスタンダードへの問題意識の乏しさ
 (自分も同じ目に遭ってきたからと、その風土を変えようとしない場合も)
発信者側
①発信者になる側が、ダブルスタンダードな行動や態度に接しても異議を唱えない
②同じ立場にある人が発信者に抑制を求める(出る杭を打つ風土)

地域の風土が影響している場合もあるように思われます。
受信者自身が、若いときに発信者として、同様の受信者の態度や行動を経験していたかもしれません。男性の場合、自分自身が受信者からそのような態度をとられることがないため、問題意識が希薄かもしれません。
こうした状況は、悪循環を生じがちです。

悪循環は絶つ必要がありますが、まずは問題意識をもつこと、そして状況に対する正確な見立てが必要と思われます。

「発信者の態度が問題」と言われる方もおられるかもしれませんが、そうであれば、発信者の態度を公平に評価し、必要があれば修正を求めることが受信者に求められます。

こうした問題状況に対して、どのような処方が望ましいかは、状況をよく見て考えていく必要があります。理解してくれる人がいるかどうかは大切です。決して諦めずに、職場の人間関係について相談できる場を得ることです。

男の子育て(2) 専業主夫の巻

父親の保育所参加

前回、お父さんが単独で乳児を連れて歩くことへの世間の反応を振り返ってみました。
今回は、その続きとして、保育所への「参加」について経験を振り返っておきましょう。

「参加」とは何かは定義が難しいことです。「社会的自立とは、社会諸集団への参加を、その年齢に通常求められる程度達成すること」あるいは「からだの状態を考慮しながら、必要な支援を得ながら社会諸集団への参加を達成すること」と、私たちの作成した成人した小児慢性疾患患者の社会的自立のサポートのためのガイドラインに書きましたが、「参加」の様態には幅があるため、慎重に考えなければなりません。お父さんの保育所参加も幅があってよいわけですので、下記は一事例に過ぎないことをお断りしておきます。

これを読まれているお父さんであるあなたは、お子さんが保育所に通っているとき、保育所に対して、どれくらいの関与をしておられますでしょうか。

レベル1.送り迎えは妻(あるいは他の家族)に任せている
レベル2.妻(あるいは通常送り迎えしている家族)が忙しい、病気など送り迎えできないときは送り迎えをしている
レベル3,妻(あるいは通常送り迎えしている家族)と同等あるいはそれ以上に送り迎えをしている

上記は、送り迎えの頻度を問うています。
他にも、連絡帳をどの程度読み、また書き込んでいるかといった保育士とのコミュニケーションの量や質はどうか、わが子の同級生の名前と顔がどれくらい一致するかや同級生たちとどれくらい遊んだことがあるかなど、同級生との交流の質と量はどうか、さらに同級生の保護者とのコミュニケーションの量や質はどうかなど、いろいろな観点から評価することができます。

私の場合は、子どもが小さいとき、職場が遠く、片道1時間40分はかかっていましたので、送り迎えは基本的に2.のレベルでした。もちろん共働きでしたから、妻が忙しければ、おふとん(月曜と土曜だけ)とおむつなどのグッズを抱え、子どもと一緒に保育所に通っていました。まだまだ、父親が育児でお休みを取るのが難しい時代でもありましたので、妻の負担がずいぶん大きかったと思います。<もっと早く気付よ!と、妻の声が聞こえてきます (^-^; >

そのような私も1年間だけですが、前の職場を離れ次の職場に就くまでの間、京都大学の研究生になって、いくつかの大学非常勤のアルバイトをしながら、研究と育児に専念したときがありました。妻は常勤職ですので、保育所の送り迎えレベル3.になり、保護者会会長をひきうけていたのでレベル4.、さらに基準が異なるのですが、炊事洗濯など家事育児は基本的に私の仕事ということでレベル5.くらいにランクしておきましょう。

いずれにしても、レベル2.とレベル3.を上回る状態の二つを、子どもの年齢は変っていましたが同じ保育所で経験できたわけです。これは、私にとって、それなりに大きなインパクトとなりました。
詳細をお話しする余裕はありませんが、基本的に下記のような違いが見えてきました。
①レベル3.以上になってから、同級生を含む父親たちの送り迎えの姿が増えた
②同様に、息子たちの同級生との遊びが増えた: 帰り際に残っている子ども達が遊ぼうと声をかけてきたり、保護者会の集まりの前後に遊ぶことが増えたため
③さらに、他の保護者の方達との交流が増え、日曜日に子どもを連れて交流する機会も増えた

①の違いはとくに印象に残っています。お父さんの保育所「出現」頻度は、いつも送り迎えするお父さんがいることで確実に増えていきました。どのくらい増えたか、ちゃんと調べておけばよかったですね(残念)。(このときも、駐車場で赤ん坊を車から降ろし、保育所に向かう私に対する周囲の視線はさまざまでしたが、それは前回のテーマに該当するので、触れないことにしましょう)

保護者会でもお父さんの勢いが増して、夏祭りでは<父親たち特製のおばけやしき>が、ほんとうに怖い!と評判になったり、生活発表会でミュージカルをしたり(こちらは父母たちの合作)、楽しい時を、みなさんと共に過ごすことができました。もちろんこれらは父親だけでできたわけではないのですが、父親たちが本気になるとすごいなと感心したことを覚えています。

②は、男性の大人に対して子ども達が求めているものを実感できる機会でした。こちらは、休日に公園でわが子と遊んでいるときにも生じる関わりですから、保育所に限らないことです。また、男女の区別をしない子育てはもちろん必要でもありますが、生理的な違いから、子ども達が求めることが違ってくるのはあるわけですから、うまくそれをとり込みながら、楽しめる関係を子ども達と築いていきたいものです。これはいつか書こうと思うテーマですが、NHKでやっていたパパサウルスみないたことではあります。

③は、卒園後も親同士の交流として続いていきました。祭りで使う小物を安く仕入れるのに長けている方、人形劇をプロでやっている方、京人形の制作者の方・・・、京都、大阪で働く多彩な方達と分け隔てなくおつきあいさせていただけたことを、懐かしく思い出します。遠くに引っ越してずいぶんたちますので、さすがに年賀状くらいになっていますが。

子ども達の生活を支え、楽しませようという親の集まりに父親たちも母親たちと共に積極的に参加していくことで、いろいろな可能性が芽生えてくると考えます。その方が、より多様な個性や才能が集まるからです。
同様の経験は、若い頃、短い期間ですが勤めていたことがある学童保育で、指導員として働いているときにも実感したことです。父母共に学童保育を支えてくださっていたので、ダイナミックな取り組みをたくさん体験できました。

保育や教育に対する親の関わり方については、ここ10年ほどで変化していることが多いようです。今回は、そこに視点を向けるものではありませんが、子育ての原点は、<わが子を大切にするなら、わが子の友達と親たちとの関わり方も大切にしよう、子ども達に愛情を注いでくれている保育士さんたちをバックアップしよう>とする意識と行動と思います。

ここは、男の子育てということで話をしてきておりますので、その視点からのとりあえずの結論。
<父親の保育所参加を進めるには、まずは、一人の父親から>あるいは<自分から>

最近はこうした動き方のできるお父さんも増えているように思います。嬉しい限りです。

なお、この経験をした1年間は、とある医大に院内学級を作りたいという保護者の皆さんのバックアップをしたときでもあります。がんの子ども達の心理支援に加えて、教育や保育について研究を進めるきっかけの一つであり、研究活動の原点の一つでもあります。その意味で、たいへん充実した時を送ることができました。
自立した生活を送り始めた若い人達には、これからも、出会った人達を大切にしながら、充実した日々をお過ごし頂きたいと願うものです。お父さんになったら、子ども達がいろいろな出会いをプレゼントしてくれます。そのプレゼントを大切にできると良いですね。

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文献紹介

  • Nancy Keene, Wendy Hobbie and Kathy Ruccione: Childhood Cancer Survivors - A Practical Guide to Your Future
     小児がん経験者が社会生活を送るために必要な基本情報を提供する書。治療サマリーを記入できる用紙付き。 O'REILLY, 2000
  • Schwartz CL, Hobbie WL, Constine LS, Ruccione KS: Survivors of Childhood and Adolescent Cancer
     小児期、青年期のがんを克服した人たちの晩期障害、心理学的問題など、最新の知見を整理した専門書。第2版。 Springer, 2005
  • 『小児看護』 28巻9号
     「小児慢性疾患のキャリーオーバーと成育医療-日常生活がより豊かになるために」を特集している。1.総論、2.キャリーオーバーが問題となる主な疾患、3.キャリーオーバーした人の心理社会的支援、4.キャリーオーバーした人の成育看護、5.キャリーオーバーした当事者の体験に学ぶ。 ヘルス出版、2005
  • 『小児科診療』 66巻7号
     「成人となった小児心疾患」を特集している。1.病態、2.診断、3.治療、4.予後。診断と治療社、2003
  • 『治療』 85巻9号
     「知っておきたい小児疾患キャリーオーバー-小児科医から患者を引き継ぐ際に聞いておきたいこと」を特集している。1.総論、2.系統別疾患のキャリーオーバー、3.紹介システム、4.小児科医から申し送りたいこと、5.小児科医から聞いておきたいこと、6.症例に学ぶ小児科医から内科医への引き継ぎ。南山堂、2003
  • アムンドソン, N. E. and ポーネル, G. R.(著) 河崎智恵(監訳): キャリア・パスウェイ 仕事・生き方の道しるべ
     あなたのキャリア探求、仕事探しをサポートしてくれる一冊。35のワークシートで構成されている。  構成;  序章  第1章 準備  第2章 自己分析  第3章 可能性の検討  第4章 めざすべき方向性の決定  第5章 今後の行動計画  終章  ナカニシヤ出版 2005年12月
  • 日本糖尿病学会(編): 小児・思春期糖尿病管理の手引き
     1.総論、2.1型糖尿病、3.2型糖尿病、4.生活指導、5.支援(心理的支援、家庭教育、糖尿病キャンプ)、6.ケアのシステム化(チーム医療、病診連携、小児科から内科への移行、医療制度、諸団体)。南江堂、2001
  • 谷川弘治・駒松仁子・松浦和代・夏路瑞穂(編): 病気の子どもの心理社会的支援入門
     小児医療分野における医療保育、病弱教育、医療ソーシャルワーク、心理臨床の入門書。子どもと家族の理解、トータルケアの考え方、実践の基本指針、専門職の養成、チーム医療・記録・リスクマネジメントなどで構成。 成人した小児慢性疾患患者(経験者)の理解と支援についても触れている。 ナカニシヤ出版、2004